学部を卒業して今の部屋に引っ越した時に,実家から高さ2m位の5段作りの本棚を持って来たのだが,その程度では早々に溢れてしまい,床でマルノウチ・スゴイタカイビルを建設しまくっていた.それらは3.11の地震で一部が無残にも崩壊したが,その教訓を活かした自主的な高度制限により,未だ繁栄が衰える兆しは無い.紙の本が好きなので嵩張る事は覚悟していたが,速読や多読をしていなくても10年以上未整理のまま積んでいると,生息域は結構狭くなる.
最近は暇なので,もう読み返す事も無さそうな古い雑誌とかを処分する事も兼ねて,本の整理を始めたのだが,アレだな.まぁ,流石に中身を確認するじゃん? そうすると,全く整理が進まんね.
そこで思いついたんですよ.このマルノウチ・スゴイタカイビル群,完全にって訳じゃないんだけど,似た様なジャンルの本が近い階層に纏まってるので,2年以上放置していたブヨグに読書感想文の様なモノを書きながら整理すれば良くね?
と言う訳で,本日区画整理されたマルノウチ・スゴイタカイビルからは以下をチョイス(?)した.
- アンソロジー 勿忘草 祥伝社文庫(2003/01/20) ISBN4-396-33082-0
- アンソロジー 邪香草 祥伝社文庫(2003/04/20) ISBN4-396-33099-5
ドッグイア(dog ear)と言う言葉がある.紙の本のページの角を内側に折り曲げて栞代わりにする事で,ワンコの耳が垂れ下がっている様に見える事から来ているらしい.本自体が傷むので最近はあまりやっていなんだが,ちょっと前はイイ感じだと思ったページにコレをやる癖があった.で,この2冊,それぞれ一つずつ耳がある.
「自分の幸せは自分でつかむよ!」
「そんなこと、できるわけないでしょう」
即座に、姉は切り返してきた。
「私がいなくては、夜道すら歩けない癖に。今更、私の手を振り切って、あんたに何ができるのよ!」
「……どうしたんだ。姉貴、おかしいよ」
呆然と、僕はかぶりを振った。
「あなたが、あんな女とつきあうからよ」
彼女は激しくテーブルを叩いた。
「あんな可愛い子とつきあうから、人の嫉妬を受けるのよ!」
〈中略〉
「犬みたいにはしゃいで、馬鹿みたい」
犬恋 加門七海
「どんなふうにする?」読んでから結構経つケド,あんまり趣味は変わっていない事は確認出来た.でも肝心の本の整理は未だ終わりそうに無い.
「おまかせ。ばっさりやって」
「いいの? 丸刈りにしたりして」
「構わないよ。いがぐり、結構流行ってるんだよ」
「嘘」
「ほんとだよ。知らないの」
そんな他愛ない話をしながら、鋏をすすめて行く。
しゃきん、はらり。
しゃきん、はらり。
銀の鋏が閃くたびに、ケープの上に髪が散る。
静けさだけが取り柄の町には人声も、車の音も、何もしない。ぴったり閉めた窓の外からは風の音さえ入ってこない。聞こえるのは鋏の音だけ。
わたしは隆行の髪をひと束すくいとり,房のようにさばく。そしてそれをゆっくりと五本の指の先に絡ませた。
隆行がうちに来た日から、髪を切るのはわたしの役目だった。
銀の鋏 青木和
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